1988年10月11日 新潟日報

新潟日報 「県人アート」

戦後の昭和二十四年生まれの白鳥十三氏が、作画においてこだわっているのは、杉本氏と同じように風景を対象にしながら、自分にとっての風景は何であったのかという自問自答の表現であろうか。

作家の描く風景は、いずれも過去十八年間住み慣れた故郷、新潟市内に限られている。それらの風景は、すみずみまで幼年時代の記憶に包まれた、いわば内側から見た風景となっている。風景に呼び掛け、風景の答えを待つ、その営みが絵画制作となっている。

具体的には「樹」シリーズの中で、海岸の松を赤松に描いているが、実際は、新潟の海岸の松はほとんどが黒松だという。外部の旅行者には、その区別すら判断できないが、作家は、内側の風景をさらに自分流に脚色しようと試みる。自分流の脚色とは、自分に親しい眼前の風景を突き放して、絵画として成り立たせようとすることである。

風景は光がポイントで、光が奥行きを決める。「夕暮れの信濃川」は、机上静物にも見られる緑色系に全体を染め上げた日没の一瞬の俯瞰(ふかん)図であるが、心理的な奥行きを与える試みである。

「自分探し」の風景画、次は故郷の雪景色に挑戦したいという。二十一点渋谷区在住

白鳥十三油絵展は、9月26日から10月2日、サエグサ画廊で開かれた。なお、新潟展は、10月16日まで、グレース・ヤシロ2階で開催

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