2006年7月8日 新潟日報

新潟日報 「県人アート」  適度の明るさと緑陰

人間が鬱蒼とした森林に恐れを抱くのは、古代人のDNAが作動しているからである。高層ビルが立ち並ぶ新宿近くに住む作者は、よく散歩するというが、のっぽのビル群は森林に見えているのかもしれない。今回の作品は、無条件の田園風景のほかに、一見すると都市の風景だが、実は田園風景が重ねられているような作品が並んだ。都会生まれの人間には記憶の奥底にしまわれた古代人のDNAだが、田舎に生まれ育った人間には現役で活躍中である。油彩作品「鎮守の杜」はいまでも都会を少し離れると良く見かける風景だが、日本列島が照葉樹林に被われていた神々の名残である。

遠くには山並み、田畑の中にこんもりと茂った杜には小さな祠が見えるようである。それに対して高層のホテルが描かれた「夢空間」や都庁が描かれた「天空へ」は、林立する高層ビル群を描きながら、神々の杜の幻影が重ねられている。

新潟日報 「県人アート」  適度の明るさと緑陰

人間が鬱蒼とした森林に恐れを抱くのは、古代人のDNAが作動しているからである。高層ビルが立ち並ぶ新宿近くに住む作者は、よく散歩するというが、のっぽのビル群は森林に見えているのかもしれない。今回の作品は、無条件の田園風景のほかに、一見すると都市の風景だが、実は田園風景が重ねられているような作品が並んだ。都会生まれの人間には記憶の奥底にしまわれた古代人のDNAだが、田舎に生まれ育った人間には現役で活躍中である。油彩作品「鎮守の杜」はいまでも都会を少し離れると良く見かける風景だが、日本列島が照葉樹林に被われていた神々の名残である。

遠くには山並み、田畑の中にこんもりと茂った杜には小さな祠が見えるようである。それに対して高層のホテルが描かれた「夢空間」や都庁が描かれた「天空へ」は、林立する高層ビル群を描きながら、神々の杜の幻影が重ねられている。

都庁の広場に立つ彫像は生命を脅かすマンモスであり、夕焼けを背景にした高層ビルは、いわば樹齢何百年の檜や杉の木立といってもよい。そして明るい陽だまりに手入れよくガーデニングされた「緑陰」は、古代人のDNAから解放された現代の風景である。人間はこうして適度の明るさと適度の緑の影を求めてきた。

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